悪魔なふたり
smile

あの日も、雲一つない青空だった。

「もう、待ってよーっ!!」

私はいつもと同じように、あの人を追い掛けていた。

「ははっ、遅い遅い! そんなんじゃあ、かけっこで一番になれないぞ!!」

あの人は足が速くて、どんどん距離が空いてしまう。

「待ってーっ!!!」

幼い私は、あの人から離れないように走るのが精一杯で

「あっ・・・」

夢中になって走っていたせいか、転んでしまった。

「あぅぅ……」

心配そうな顔で今にも泣き出しそうな私に近づいたあの人は、私よりずっと大きな手で優しく撫でてくれた。

「悪い悪い、……あまり意地悪し過ぎたね」

よしよし、ポンポンと頭を撫でられようやく泣き止んだ。

「……ねぇ、あの丘まで行かない?」

泣き止んで落ち着いた頃、とつとつと私は問い掛けた。

「いいよ。・・・今度は転ばないように手を繋ごうか」

その人は撫でてくれた時と同じように優しく手を繋いで、私の歩幅に合わせて歩いてくれた。

< 5 / 13 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop