キス魔なあいつ

しかし次に悠は、今度は頬を膨らませ、ぼやいた。


「ってか、俺からしようって言ったことないんですけど…。」

「でも、してたことに変わりはないでしょう」

「…はい。」


ふん、あたしに口で勝とうなんて。

そんな強がりを言って見せたけど、本当は嬉しい。
涙が出そうなくらいに。

悠があたしだけだと言ってくれる、そんなことが。

悠があたしのことで一喜一憂してくれる、そんなことが。


でも、そんな“憂”だった悠が何かを思い出したらしく、一気に顔を歪めた。



「そう言えば、陽菜だって俺以外とキスしてたよね？」

「あれは…っ！」

「陽菜も、俺としかしないんじゃないの？」


勉強面では頭がいいくせに、なんでこういうことには回んないかな。

勝手に勘違いするし、勝手にふて腐れるし。