キス魔なあいつ
そんなあたしの幼なじみ。
悠(はるか)。
あ、
“女みたいな名前”は禁句よ?
機嫌が悪くなっちゃうから。
「陽菜(ひな)ぁ~?」
「なっ、えっ、ちょっ!」
悠はあたしの名前を、甘ったるい声で呼んで、その腕であたしの肩を抱く。
しかも、後ろから。
耳に、息がかかってこちょがしい。
「ほ、包丁が危ないからっ!!」
あたしが今、夕食を作っているのは悠のためでもあるのに、今は邪魔しないで欲しいものだ。
「えぇ~?」
しかし悠はそんなあたしの言い分なんてお構い無しで、聞き分けのない子どもが駄々をこねるような声をあげた。
耳元でしゃべるなっ!っていつも言っているのに。