キス魔なあいつ
一体なんだろう。
モヤモヤとイライラが混ざって、大きな渦ができたみたい。
そのうちこの渦に、巻き込まれてしまいそうで怖い。
「…陽菜ちゃん…?」
そう呼ばれて振り返ると、百花がいた。
慌てて追いかけてきたらしく、息が少し乱れている。
あぁ、そんな一生懸命な百花は。
「…本当に可愛いわね」
「えっ!?なにっ、急に!」
もうさっきまで感じていた何かに対する恐怖感は、どこにもない。
もしかしたら、そもそも気のせいだったのかも知れないし。
「教室戻ろうか、百花」
「あぁ~っ!!
陽菜ちゃん待ってよ~!!」
そう。
こんな“やきもち”みたいな気持ちなんて。
見ないフリをするの―――。