キス魔なあいつ
あたしは、あの時の悠と同じ場所に立っていた。
上を見上げれば、昼にあたしが貼りついていた屋上のフェンスが見える。
けど、ここからならきっと悠はあたしに気づいていなかっただろう、と少し安堵した。
「もう分かってると思いますけどけど…、僕はあなたのことが好きなんです。
僕と、付き合ってください」
校舎裏に着いての、開口一番。
当たり前のように、目の前の彼は言った。
…悠は、何と告白されたのだろうか。
「名前も知らない人の気持ちを読めるような能力は、あたしにはありません。」
そんな人の気持ちまで、真摯に受け取ってあげようなんて、あたしは人間出来ていない。