キス魔なあいつ




「お願いっ、陽菜ちゃんっ!」


無視を決め込んだあたしに、後ろで拗ねる悠。


「ね~え~?」



――ぶちッ。

怒ったわ。
もう怒った。



「悠、うるさ…っ…」



あたしは包丁をまな板に叩きつけるように置いて、あたしより顔いっこ分背の高い悠を振り返った。


……んだけど。


その瞬間に後悔した。

振り返らなきゃ良かった……。

これじゃ、悠の策略にはまったみたいじゃない。





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