キス魔なあいつ
まぁ。
そもそも真剣に、あの彼の想いを受け止めるつもりすら。
あたしには無かったのだから、仕方がない。
……でも、気持ち悪かった。
あたしから彼にしたのに、危うく突き飛ばすところだった。
今まで、“あんなキスなら、誰でも出来る”なんて。
言っていたのは、あたしなのに。
あたしはさっきから震える、冷たくなった唇を、手の甲でこすった。
まだ残っている、彼の感触が、ますます気持ち悪い。
“被害者”はあっちなのに、“加害者”のあたしも。
“被害者”のような気がする。