キス魔なあいつ
あたしは靴を脱いで、家の中で悠を探す。
リビングには見当たらないし、テレビもついていない。
浴室からもシャワーの音なんてしない。
トイレでもない。
一体、どこに?
とりあえず、制服を着替えようと思って自分の部屋のドアを開く。
「…きゃ…っ!」
気を抜いていたあたしは、目に入った姿に、思わず小さく悲鳴を上げてしまった。
一瞬その光景に身を硬くして、不審者なのではと緊張したが、すぐに悠だと気づく。
悠は、あたしの部屋で、あたしのベッドの脇に座り、顔を埋めていた。
これは悠の、落ち込んでいるサインだ。