キス魔なあいつ




「………陽菜ぁ……」

甘えたな声は、あたしを欲している。

虚ろな目は、あたしをしっかり捕らえている。



そんな悠に、あたしは今までにない、焦りを感じた。

ドクン、ドクン…、と全くかわいくない音をたてる胸が苦しい。

「…な、…なに…?」


やっと絞り出した声は、あたしらしくないほどに、それがにじみ出ていた。



「…ねぇ、陽菜…?」



ゆっくりと、悠の右手があたしに伸ばされた。

そっと、撫でるように左頬に触れるから。

思わず、ビクンッ…、と震えてしまった。




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