キス魔なあいつ
悠がおかしい。
いや、いつもおかしいんだが。
けど、それ以上に、もっとおかしいのは、あたしだ。
不意に、悠はこんなに艶っぽかっただろうか、なんて見当違いなことを思ってしまう。
今までなら、考えられない。
あり得ない。
でも、今なら…。
今だから?
あたしはどうして、悠にドキドキしているんだろうか。
「…陽菜、キスしてよ…」
悠が、あたしの頬を何度も往復させて撫で上げるから、その言葉の意味を理解するのにまで時間がかかった。
「…俺にも、キスして」
まだ虚ろな目には、鈍い光が宿っている。