キス魔なあいつ




今、悠から目を逸らしたら負けな気がした。

けど、なんとか逃げたくて、あたしは下を向いた。

…こんなこと、思ったことなかったのに。



どうして?

キスなんて、今までいくらでもしてきた。

数え切れないほど、してきたはずなのに。



「ねぇ、陽菜? してよ…」


どうして。
どうして…。


「……俺には、できないの…?」


……悠には、できないの…?




あたしは悠からされた質問に、無言を返した。

あたしが聞きたいくらいの疑問を、悠に説明できるワケがない。




< 52 / 111 >

この作品をシェア

pagetop