キス魔なあいつ




ゆっくり、ゆっくりと。



何で、あたしを泣きそうなの?

悠にキスされることを望んでいるのに。

何で、何で、何で…。


胸が苦しいの?



昼間に襲われた、胸焼けのようなモヤモヤなんて、全然比べ物にならないくらい。

ツキツキと、何かが刺さるように痛む。



痛すぎて、泣きそうなのだろうか。


「……だめ…、」


それは、もう遅かった。

言葉と同時に、ポロッと、涙が一粒落ちた。


涙は一粒落ちれば、後は決壊したようにボロボロと、次から次へと落ちてくる。




唇が触れ合うまで、あと3センチだった。




< 55 / 111 >

この作品をシェア

pagetop