キス魔なあいつ
ゆっくり、ゆっくりと。
何で、あたしを泣きそうなの?
悠にキスされることを望んでいるのに。
何で、何で、何で…。
胸が苦しいの?
昼間に襲われた、胸焼けのようなモヤモヤなんて、全然比べ物にならないくらい。
ツキツキと、何かが刺さるように痛む。
痛すぎて、泣きそうなのだろうか。
「……だめ…、」
それは、もう遅かった。
言葉と同時に、ポロッと、涙が一粒落ちた。
涙は一粒落ちれば、後は決壊したようにボロボロと、次から次へと落ちてくる。
唇が触れ合うまで、あと3センチだった。