キス魔なあいつ




本当は、お弁当だって悠の好物ばかり入れてみた。

もしかしたら、朝、登校したら。

『陽菜ちゃーん、お弁当ちょーだいっ!』
って来てくれるかな、なんて思ってしまったから。

何事もなかったかのように、今まで通りの“幼なじみ”。

ただ、キスをしなくなったってだけの。

普通の“幼なじみ”になれるんじゃないかな、って思ったから。



きっと、それだけじゃ胸の痛みは拭い取れないと分かっていても。

あたしは、それでもいいと思った。


だって何よりもただ、悠の隣にいれないことの方が、ツラくて堪らない。




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