キス魔なあいつ
「ほら、着いたっ!」
「……う、うん…」
気が付けば、そこはすでに悠の教室の前だった。
「がんばって、陽菜ちゃん!」
「……うん、」
気が付けば、悠のお弁当を握る手には力が入っていた。
怖い、…怖い。
悠がこのお弁当を受け取ってくれるかなんて分からない。
いらないと言われたら、あたしはどうしたらいいのだろう。
そっか、なんて言えないし、今まで通りになんて笑えない。
ましてや、悠がここにいるとは限らない。
昨日の昼だって女子に呼び出されていたワケだし、もう学食に行ってしまったかも知れない。