キス魔なあいつ
「好きな人としか、しないって決めたから…。」
目の前の彼から、あたしは視線を逸らさない。
真っ直ぐ見つめ返す。
だから、あたしはもう、キスなんて一生出来ない。
好きな人に、他に好きな人がいるのだから。
それでも、いい。
キスが出来なくても、ただそばにいたくて。
あたしはこうして、悠を探しているのだから。
誰かに教えてもらわなくたって、必ず独りでも、悠を見つけてみせる。
あたしは、そう決めたのだ。
「……良かったです。」
少し目を見開いてから、彼は優しげにその目を細めた。