キス魔なあいつ




そしてすぐに、足音が聞こえてきた。

あぁ、もう…。
なんで追いかけてくるのよ…。
ほんと、バカなやつ…。



「…陽菜、開けて?」


扉越しに聞こえるのは、やっぱり聞き慣れた愛おしい人の声。

きっと男の力なら、扉に寄りかかったあたしなんて、一緒にこじ開けられちゃうくせに。

こうやって、あくまでも、あたしに決定権を持たせるなんて。

これはもしかして計算なのだろうか。

それとも、やっぱりあたしに甘すぎるほどに優しいだけ?


どちらにしたって、意地が悪いやつだ。




< 83 / 111 >

この作品をシェア

pagetop