キス魔なあいつ
そしてすぐに、足音が聞こえてきた。
あぁ、もう…。
なんで追いかけてくるのよ…。
ほんと、バカなやつ…。
「…陽菜、開けて?」
扉越しに聞こえるのは、やっぱり聞き慣れた愛おしい人の声。
きっと男の力なら、扉に寄りかかったあたしなんて、一緒にこじ開けられちゃうくせに。
こうやって、あくまでも、あたしに決定権を持たせるなんて。
これはもしかして計算なのだろうか。
それとも、やっぱりあたしに甘すぎるほどに優しいだけ?
どちらにしたって、意地が悪いやつだ。