キス魔なあいつ
悠にとったら、なんの関係も意味もないことだって分かってる。
でも今だけでいいから、分かったと言って欲しい。
それだけで、あたしは悠と“幼なじみ”に戻れるのだ。
だから…。
「陽菜はもう、アイツとしかキスしないの?」
「え…?」
いつの間に立ち上がった悠は、制服の埃を払っていた。
妙に落ち着いた声が、逆に怖い。
冷たく突き放すような声だ。
「陽菜ちゃんは、アイツとしかキスしないんだ?」
“アイツ”?
あ…っ!
忘れてたっ!
悠は、あの彼とあたしが付き合ってるって勘違いしてるんだった。
「あの、悠、」