キス魔なあいつ
「そっか…、ふーん。」
「あの、悠、聞いて…、」
だんだん悠があたしに近づいてくる。
あたしは悠から逃げるようにジリジリと後ろに下がる。
「悠、ちょっと待っ……きゃっ!」
どうしよう、あたしの背中にはドアがピッタリとくっついている。
どうして引き戸なのよ!なんて、冷静にツッコミを入れる暇すらない。
「あ、あの~…」
悠はどんどん近づいてくる。
そして、手をあたしの耳元に突いた。
完全包囲状態。
もうあたしは逃げられない。
「陽菜? 俺も、もう好きな人としかキスしないよ。」
悠はニコッと、いつもの完璧な笑顔でそう言った。