君だけが好きで。

恭は、恭の地元やあたしの地元も
含んだ、この辺一帯のアタマである、

"竹内 恭(タケウチキョウ)"。

今考えれば名字聞いてなくても、
名前一緒やなって(笑)

それから尚矢と待ち合わせた。

恭ん家からいちばん近い駅に
待ち合わせ、あたしと恭は
歩いた。

尚矢と会うために。

尚矢はプライドが廃るといって、
お兄ちゃんを出すことは絶対に
ない。…まあ恭のが上っぽいし、
大丈夫とはおもうけど。

5分くらい歩くと駅について、
ベンチで待っていた。

「いまの彼氏とは、どうするつもりなん?」

と、恭に言われた。

「別れる…かな。
ずっと言い出せなかった。
暴力が怖くて。でも…今は恭がいるから。
愛巡は言おうって決意した。」

ほんとのことだった。

「なあ、愛巡?」

「…ん?」

「その件がちゃんと終わったら。」

「…」

「俺と、付き合って。」

恭の澄んだ瞳に吸い込まれそうだった。

「いいよ。ちゃんとケジメつけたらね。」

あたしはそういって、尚矢のビッグの音に気付き、
立ち上がった。

「愛巡。」

そう呼ぶ声は、少し高くて、澄んでいた。

「尚矢。」

びくびくしながら名前を呼ぶ。

怖かった。とてつもなく。

久しぶり、と不気味な笑みでいうと、
尚矢に腹を殴られる。

ー…うっ…。

「なっ、…お、ゃ…っ」

「なんで俺から逃げたのかなあ。愛巡。」

ードサッ。
ー…うっ…くっ、るしぃっ…。

「あっ、いじゅ、ね…。」

"もぅ、尚矢のこと好きじゃないや。"

そういう前に胸ぐらを捕まれて…
長すぎて言えない。

単刀直入に、言わなきゃ…。

「ー、わっ、かれ、ょ…っ。」


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