シュレーディンガーのみにゃこ【その一】
「お願いしますよ先生、
もう一度、小説のタイトル、
考え直しては貰えないすかねぇ?
短期とは言え折角の
連載ですし…」
「……はぁ…」
編集様の意見に私は
曖昧に返事をし、暫くやり取り
をしてから受話器を置いて
溜息一つ…
それからのたくたと
縁側に向かい狭い板の間に
ペタンと腰を下ろす。
貸家で有るがこの家に住む
決断をした理由には、この縁側の
存在が有ったからだ。
そして、私の視線の先には古い
梅の木が一本、その幹には、
もさもさ柔らかな
草が生え、更にその上には
くりゅんと丸まって木漏れ日を
浴びながら気持ちよさそうに惰眠を貪る
三毛猫の「みにゃこ」の姿。
良いなぁ猫は気楽で…などと思っていたら、
私の気配を察したのか、彼女は
かったるそうに起上り、
のそのそ私に歩み寄ると
膝にひょいっと飛び乗って
すりすりと擦り寄って来る。