僕らはみんな、生きている。
 麻美が布団をかぶって、睡眠にひきずりこまれようとしていた深夜11時57分。アパートの外から、一台のバイクが走る音が静寂を切り裂いた。

 部屋のテーブルに置かれた携帯電話に、光がつき、着うたが流れた。それに起こされて麻美は上半身を起こす。
「はい……」
 目をあけたばかりで、機嫌の悪そうな声が出ていた。

「来たよ」
 その声は秀司だ。頭から冷水を浴びせられたかのように目を大きく開いた。
「えっ。でもなんで」
 無理、とメールしたのは秀司のはず。
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