僕らはみんな、生きている。
 穏やかな曲調のクラシックが流れている。

 ほかにも人がいたけど、奇声を発したり暴れたりする人はいない。病院の待合室で見る風景とまったく変わらなかった。
 心療内科って、こういうところなんだ。ふーん。

 問診を書き終わって待っていると、

「杉原さん」

 と秀司が呼ばれて、診察室に入っていった。

 その後ろ姿を見送ると、私はマガジンラックにあった雑誌を手に取り、座ってぱらぱらとめくりながら秀司を待った。

 
 それから20分くらい過ぎて、診察室のドアがあいた。

 秀司はなにか落ち込んでいるような顔をしていた。
< 22 / 60 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop