僕らはみんな、生きている。
 帰り道の途中で、私は家に着く前に

「駅前でとめてくれない?
 ちょっと用があって」

 と言って先に降りて、秀司とそこでさよならをした。

 走り去るバイクの後ろ姿を見送りながら、夢も希望もないと言った秀司に何も言えなかった自分に腹が立った。

 統合失調症なんて、なんにも知らない。

 知らなければ、秀司の苦しみを理解できない。

 私は駅前の本屋に向かった。
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