僕らはみんな、生きている。
 鶏肉をまな板の上に乗せ、包丁でひと口大の大きさに切り分ける。

 それから、砂糖と塩とこしょうとガーリックパウダーと小麦粉を混ぜたものをまぶし、少し置いて、鍋に入れた油で揚げた。

 鶏のから揚げを作りたかった。

 が、焦げてしまい、黒いかたまりがいくつもできあがった。

 麻美は料理が苦手だった。


「ごめん。うまくできなかった」

 考えごとをしながら揚げたから。

 お皿の上にある乗った黒い物体。大丈夫そうなのは2、3個だけ。それを秀司の手前になるようにテーブルに置いた。

「……これはひどいな」
 顔をしかめて秀司がつぶやいた。
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