僕らはみんな、生きている。
「……妖精だよ」

「はア?」

「ほら、たまにあるでしょ。
 テレビで芸能人が“妖精見た”って」

 麻美は親指と人差し指で弓のような形をつくった。

「“これぐらいの大きさの小人を見た”って。

 それがもしかしたら、寝ぼけて夢と現実がごっちゃになっただけかもしれないし、何かと見間違えたってことも考えられるでしょ」

「うん」

 ゆかりは麻美が何を言いたいのかわからず、困惑した顔で聞いている。

「だから秀司の”トリみたいなもやもや”も、その人にとってはほんとにあったことなんだよ。

 ほかの人が見たことないから信用できなくても」

 勢いよく蛇口から出る水のように話す麻美に、黙って聞いていたゆかりは

「芸能人が見た妖精と、
 病気のせいで見た幻覚をいっしょにするのは……。強引だと思う……」

 と困惑した顔のまま言った。
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