僕らはみんな、生きている。
 ねえ秀司。秀司と付き合ってわかったことがあるよ。

 人に優しくしても、その見返りを求めないこと。

 それは本当の優しさじゃないってこと。

 誰かのために何かをしようとするのは、すごくエネルギーがいる。
 心の中に溜まっていくゴミのようなものは、いつか捨てなければ体に悪い。ストレスは発散しないと体調を崩してしまう。

 でも、自分のゴミを捨てるだけじゃなく、他人のゴミを変わりに捨ててあげられる、自分の心が黒いものでいっぱいになりそうでも、他人の分を取って自分の中に入れて燃やしてしまう、

 それが本当の意味での優しさじゃないかと思う。

 私は秀司に、本当の意味で優しくしてあげられなかったね。

 ただ、見守っていたかったんだよ。遠くから。秀司か気にならないくらいの距離で。
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