おじいさんと孫(仮題)
店の支度と言っても、店内の掃除をし、ドアのガラス窓にかけた札をクローズからオープンに替えるだけだ。それからパン屋さんがパンを運んでくるのを待ち、パン屋さんと開店前に少しお話をするのが日課だった。さて、そろそろ掃除をしようかと戸棚に置いていた箒を手にしたときだった。  
 
こんこん。
 
控えめな、しかし意思の強いノックの音。
箒から手を離してドアの方を見る。
窓ガラスにかけたカーテン越しに人の姿があった。
札はクローズのままの筈だ。
 
ー…パン屋さんだろうか。
 
懇意にしている近所のパン屋を思い浮かべてドアを開ける。
 ドアの外に居たのは見知った人物ではなく。
記憶にない人物だった。
 
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