誰も知らない物語
徐々にわかる砂煙の向こう側。
「…おい、あれって…。」
隕石か何かだと思っていた俺たちは驚いた。
いや、それ以上のものかもしれない。

「あいたたた…、なんでこうなるかな…。」
砂煙を叩き落とす。
着物を羽織っていて、豪華な髪飾りをつけている。
まるで、昔の姫を連想させる。

「あれって…人間?」

砂煙が晴れ、その姿がハッキリとした。

そこにいたのは、紛れもない…人間。
しかも、人間の女の子だった。

空から人間。
まるでファンタジーの世界にでも来た錯覚をする。
けれど、目の前にあるのが現実だ。
「けれど、兎に角着いたわね。」
と満足気そうに言う少女。

俺たちは目を点にしたまま動けないでいた。
あたりにも目の前で起きたことに衝撃を受け、動けなくなる。
まさに今、そんな状況だ。

「ん?」
立ちすくんでいた俺たちに少女は気づいた。
…ま、気づいかない方がおかしな距離である。
気づかれても仕方ない。

俺たちは逃げることもできず、
「お前、誰だ?」
健三が冷静に尋ねた。
この状況下でも冷静に話せる健三、この時ばかりは流石だと尊敬した。

「私か?私は瑠奈と申す。」
「瑠奈?」
「こちらの世界では、“かぐや姫”と呼ばれているはずだ。」

かぐや姫?
あのかぐや姫のことなのだろうか。
書かれた時代も、作者も、謎の多い物語
“竹取物語“ のことだろうか。

「かぐや姫って…。」
考えていることはみんな同じようだ。
そして、その答えを、
「難題五題出した、あのかぐや姫だ。」
と自慢気に話した。

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