誰も知らない物語
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手頃に朝食を食べ、直ぐさま家を出た。
相変わらずの暑さだ。
これで連続三日の直射日光。
俺にしては珍しすぎるアクティブである。

さくさくっと駅まで行って電車に乗る。
当然だが、瑠奈はビックリして乗るのに少々手間取った。
そういえば…やたら警官が多い気がする。
その理由は大方検討がつく。
電車の電工掲示板にもその旨が表示されている。

『次は~永田町~永田町~』
車掌の独特の声が車内に流れる。
「降りるわよ!」
と優香がドアへ向かう。
「お、降りるって…ここ永田町だそ!」
降りる駅は日本の頂点ー永田町。
国会議事堂前だ。
躊躇する俺にはお構い無しに優香は降りた。

地下鉄の改札口を出て、地上を目指す。
そして、目の前に広がる風景。

優香の言う図書館は、国会議事堂前の国立図書館だった。
「お、おい。マジかよ…。」
想像以上の迫力に圧倒された。
「私はよく来るわよ。」
「マジかよ。」
「館内は私語厳禁よ。」
と慣れた感じで中へと入っていった。

優香がこんなところに来ているなんて…知らなかった。
通りで、物知りなわけだ。

「守殿、優香殿は…天神のようじゃな。」
「はっ?」
瑠奈も優香の言動に驚きを隠せないようだ。
天神って…学問の神様だろ?…言い過ぎな気もするが…。
「守殿、行くぞ。」
「あ、あぁ。」

これ程の大きさだ。
優香から離れたら即迷子だ。
急いで優香の後を追った。

中は想像以上に静かだ。
本のページを捲る音が聞こえるくらい静かだった。

国立図書館。
入ったことのない場所に戸惑いが隠せない。
雰囲気や本の多さ、館内にいる人は皆頭が良さそうだ。

「なあ、優香。いつも来てるって本当かよ?」
と耳打ちをするように聞く。
声を出せない雰囲気が重い。
「そうよ。課題とかやりにね。」
と軽々答えた。
課題やるのにここに来るとか…どんだけだよ。
普段、期日ギリギリに焦ってやる俺との差が明確となった。

優香は人が変わったように黙り。
ずんずんと奥へと進んでいった。
俺と瑠奈はただ付いていくしかなかった。

あるところに着くと、
「たぶん…この辺ね。」
と立ち止まった。
その場所は、
「逸話…って。関係あるのか?」
逸話や迷信などを扱う本棚。
それが蓬莱との関連があるのか。

「蓬莱さんは不老不死。ここはある意味…、私の勘ね。」
と本を探しながら言う。
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