誰も知らない物語
「駄目ね。」
全てを読み終えたところで優香が言う。
これだけ本を読んでダメって…。
「どうする?」
「とりあえず…外に出ましょう。もう日も傾いてるし。」
本に没頭するあまり外に気がいっていなかった。
外は既に日が傾く時間だった。

「倉持くんにも話を聞きましょう?」
そうだ。
健三も調べている。
健三も何か情報を得ているはず…それを知ることも大切だ。

「じゃあ、ファミレスでも行かないか?お腹…減って。」
昼御飯を食べていないからお腹がペコペコだ。
本に集中していて気がつかなかった分、いっきにお腹が減った感覚だ。
「そうね。」
と国立図書館を後にした。


微妙な時間だからだろうか。
妙に空いていた。
「これなら、ある程度楽に調べられるわね。」
「そうだな。」
そんな秘密にするほどでもないが、知られると面倒な話だ。
人は少ない方がいい。

俺は健三から貰った携帯用の通話マイクを使って健三に連絡した。
『もしもし、どうした?』
健三は面倒臭そうに出た。
『面倒臭そうにすんなよ。こっちもいろいろ調べてるんだから。』
『悪い。後ろの奴らがうるさくて…』
後ろの奴ら…やっぱり戦力外だった。

『それで、何か分かったのか?』
声と一緒にキーボードを叩く音がした。
どうやら健三もネットを使い調べているようだ。

『あぁ、国立図書館で調べた。』
と、本で得た情報を伝えた。

国立図書館で得た情報。

不老不死≒鳳凰という点。
一概とは言えないようだが、不老不死の話題には必ず鳳凰の伝説が関わっていた。
鳳凰とは、あくまでも伝説にすぎない。
そもそも、一般的に不老不死があり得ない話であるからだ。

『なるほど。つまり、不老不死≒鳳凰だと。』
『本にはな。』
『…賭けるか?』
『はっ?』
いきなり健三は言った。
健三のことだ、何か企みがあるのだろう。

『なにを?』
『仮にだ。“蓬莱の薬=不老不死=鳳凰”の式が成り立ったら…?』
『成り立ったら?』
正直、俺には何だか分からない。

「鳳凰の目撃…。」
優香が言葉を漏らす。
片方のイヤホンを優香に預けているから聞こえているだろう。
『正解。』
優香の言葉は健三に届いていた。
健三は嬉しそうに話を続けた。

『蓬莱は不老不死だ。つまり、鳳凰。』
『それって?』
あまり理解が出来ていない俺に優香が、
「不老不死≒鳳凰なのよ?だったら、不老不死である蓬莱が鳳凰。って考えても話の辻褄は合うわ。」
と、紙に図式を書き分かりやすく教えてくれた。

『さすが、設楽さん。どっかの誰さんとは物分かりが違う。』
『うるせー。』
「確かに、もしそうなら“鳳凰の目撃”が次のヒントね。」
と優香は更に考えを広げた。
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