誰も知らない物語
ファミレスを出るとやや傾いた日が西から射した。
確かに…もたつく時間は無さそうだ。
しかし、場所は遠い。
ちゃんとした準備が必用だ。
「まぁ、とりあえず新宿ね!」
大都市新宿。
ある意味無いものは無いだろう。
「そうだな。」
再び地下鉄に乗り込み新宿駅を目指した。
この選択が物語を加速させるとは知るよしもなかった。
然程時間もかからず新宿駅に着いた。
しかし、やけに新宿が騒がしい。
いや、騒がしいのは当たり前なのだが、その様子がおかしい。
「守…。何か、変じゃない?」
「あ、あぁ。」
悲鳴に似た騒ぎ声だ。
それと一緒に怒鳴り声も聞こえる。
「止まれ!止まらないと撃つぞ!」
それともう一つ…心安らぐような鈴の音も聞こえた。
その時、携帯電話が鳴った。
健三からだった。
俺は通話用イヤホンをつけた。
『もしもし、どうした?』
『お前ら今、どこにいる?』
あまりの焦りように本当に健三かと疑うほどだった。
『新宿駅だ。』
冷静に答えるが、
『今すぐそこから逃げろ!』
『はっ?』
健三は確実に何かに焦っていた。
その焦りように俺の脳裏に一つの事が過った。
『まさか…あいつ…か?』
『今、ニュース速報やってる!場所は…新宿駅だ!』
俺の頬を一筋の汗が伝った。
暑さではない、冷や汗。
「守…どうしたの?」
優香が心配そうに俺を見た。
「守殿…まさか…。」
瑠奈は勘づいている。
表情でわかった。
「くそ!」
『守、電話切るなよ!』
『わかった!』
通話を切ることなく携帯電話をポケットにしまった。
この通話用イヤホンの便利なところはマイクが付いているから、携帯電話をしまっても会話ができることだ。
「優香、瑠奈。逃げるぞ!」
「はっ?」
あまり理解出来ていなそうだが、俺は強引に優香の手を取り走り出した。
瑠奈は理解できているようで、俺の手無しでも走ってくれた。
「…愚民が。逃げても無駄だ。」
背後から男の声がした。
その声は逃げようとした俺たちの足を止めるほど鋭かった。
「瑠奈、探したぞ。」
振り向くにも勇気がいるほどの圧力を感じた。
だが、振り向くしかない。
すくむあしを無視して振り向く。
「手間をかけやがって…。」
そこにいたのは紛れもない、夢の中の男。
銀色の髪に左の耳に龍の耳飾り、キリッとした面立ち。
何より…その目には殺気を感じた。
「兄さん。」
月の帝…朔夜。
確かに…もたつく時間は無さそうだ。
しかし、場所は遠い。
ちゃんとした準備が必用だ。
「まぁ、とりあえず新宿ね!」
大都市新宿。
ある意味無いものは無いだろう。
「そうだな。」
再び地下鉄に乗り込み新宿駅を目指した。
この選択が物語を加速させるとは知るよしもなかった。
然程時間もかからず新宿駅に着いた。
しかし、やけに新宿が騒がしい。
いや、騒がしいのは当たり前なのだが、その様子がおかしい。
「守…。何か、変じゃない?」
「あ、あぁ。」
悲鳴に似た騒ぎ声だ。
それと一緒に怒鳴り声も聞こえる。
「止まれ!止まらないと撃つぞ!」
それともう一つ…心安らぐような鈴の音も聞こえた。
その時、携帯電話が鳴った。
健三からだった。
俺は通話用イヤホンをつけた。
『もしもし、どうした?』
『お前ら今、どこにいる?』
あまりの焦りように本当に健三かと疑うほどだった。
『新宿駅だ。』
冷静に答えるが、
『今すぐそこから逃げろ!』
『はっ?』
健三は確実に何かに焦っていた。
その焦りように俺の脳裏に一つの事が過った。
『まさか…あいつ…か?』
『今、ニュース速報やってる!場所は…新宿駅だ!』
俺の頬を一筋の汗が伝った。
暑さではない、冷や汗。
「守…どうしたの?」
優香が心配そうに俺を見た。
「守殿…まさか…。」
瑠奈は勘づいている。
表情でわかった。
「くそ!」
『守、電話切るなよ!』
『わかった!』
通話を切ることなく携帯電話をポケットにしまった。
この通話用イヤホンの便利なところはマイクが付いているから、携帯電話をしまっても会話ができることだ。
「優香、瑠奈。逃げるぞ!」
「はっ?」
あまり理解出来ていなそうだが、俺は強引に優香の手を取り走り出した。
瑠奈は理解できているようで、俺の手無しでも走ってくれた。
「…愚民が。逃げても無駄だ。」
背後から男の声がした。
その声は逃げようとした俺たちの足を止めるほど鋭かった。
「瑠奈、探したぞ。」
振り向くにも勇気がいるほどの圧力を感じた。
だが、振り向くしかない。
すくむあしを無視して振り向く。
「手間をかけやがって…。」
そこにいたのは紛れもない、夢の中の男。
銀色の髪に左の耳に龍の耳飾り、キリッとした面立ち。
何より…その目には殺気を感じた。
「兄さん。」
月の帝…朔夜。