チョコレートトラップ
凛の言葉に、

味わったことのない緊張が

私の全身を一瞬にして駆け巡る。


それまでの勢いは

どこへ行ってしまったのか、

私の足が石膏で

固められたように

なってしまって動かない。


私と凛の視線の先には、

ゆっくりと昇降口へ向かって

歩いている高橋くん。


ずっとずっと見つめ続けてきた

高橋くんのたくましい後ろ姿。


見間違うはずは、ない。


「ほら、今がチャンスだよ」


そう言うなり、

凛が私の背中を勢いよく

ポンと押した。


あまりの力強さに

よろめいて転んでしまいそうに

なるのをぐっと堪える。


突然訪れた奇跡のチャンスに

私の心臓がバクバクと音を立てる。


ギシギシ聞こえてきそうな

足取りで私は一歩ずつ

高橋くんへ近付く。


もう少し、もう少し……





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