チョコレートトラップ
ようやく高橋くんの

すぐ後ろまでたどり着き、

声を掛けようと

口を開いた時だった。


「たかは……」


「高橋センパイ!」


甲高くて大きい声に

私の声が無常にも遮られる。


そしてその声の主であろう

女の子が私と高橋くんの間に

割って入って、

高橋くんの腕を絡め取る。


「あたしぃ、高橋センパイに

 チョコ作ってきたんですぅ」


猫なで声を出して喋る

後輩の女の子と一緒に、

高橋くんは昇降口へ

入っていってしまった。


ものの数秒間で起こった出来事に、

私の足は完全に

地面にくっつきその場に

ただただ立ち尽くしていた。





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