ユアサ先輩とキス・アラモード
湯浅を見れば、その思いは強くなる。
四月に入部してから半年間、彼との距離は先輩と後輩のまままったく縮まらなかった。その理由は意外なところにあった。
(弓道がこんなに礼儀にうるさいとは知らなかった。部活中は、休憩時間以外、私語どころか笑顔もダメなんて)
矢を射る順番待ちで座って並んでいる湯浅をうらめしそうに見る。たまに目が合う事はあっても、親しく会話するきっかけにはならない。休憩中は普通に過ごしていいが、彼の周りにはいつも多くの女子が群がっていて、なかなか話すチャンスがない。ならば部活が終わってから話しかけようと思っても、後片付けや明日の準備をしているうちに帰ってしまっていた。
(このままじゃ、何の進展も無しに二年後を迎えて、先輩が卒業しちゃう。よーし、部活中、部活終わりがダメなら始まる前だ。早めに来て、さっさと準備して仲良くなるチャンスをつかんでやる!)
妙案を思い付いたとばかり、真帆は一人ニヤニヤした。
ところがいざ翌日実行しようとしたところ、一年生の女子部員どこか、男子部員まで全員いた。みんな同じ事を考えていたのだ。
湯浅のニックネームは『ミスター・パーフェクト』。容姿も頭脳も弓道の腕前もすべてにおいて三重丸の彼は、女子だけでなく、男子も仲良くなりたいと思っていた。
ダメ押しだったのは、湯浅は真帆以外の部員の専任指導員になってしまった事。彼は男子部員につきっきり。自分も当然練習しなければならないので、話せるのは上級生だけとなった。
(もう、仲良くなるチャンスはないのかなぁ…)
途方に暮れた。味気ない日々が続いた。道の途絶えた絶壁に立ち、戻るか他の道を探すがずーっと考えた。
あの日から約一か月。今、真帆の心は一等星の星のようにキラキラ輝いていた。この世の中で一番自分が幸せな気がした。何でもできそうな気がした。
心がふわふわと宙に浮いていた。的前に立ち矢を射る練習をするため、矢をつがえ構えたが、どこか現実じゃない。的が異世界にあるように見える。
四月に入部してから半年間、彼との距離は先輩と後輩のまままったく縮まらなかった。その理由は意外なところにあった。
(弓道がこんなに礼儀にうるさいとは知らなかった。部活中は、休憩時間以外、私語どころか笑顔もダメなんて)
矢を射る順番待ちで座って並んでいる湯浅をうらめしそうに見る。たまに目が合う事はあっても、親しく会話するきっかけにはならない。休憩中は普通に過ごしていいが、彼の周りにはいつも多くの女子が群がっていて、なかなか話すチャンスがない。ならば部活が終わってから話しかけようと思っても、後片付けや明日の準備をしているうちに帰ってしまっていた。
(このままじゃ、何の進展も無しに二年後を迎えて、先輩が卒業しちゃう。よーし、部活中、部活終わりがダメなら始まる前だ。早めに来て、さっさと準備して仲良くなるチャンスをつかんでやる!)
妙案を思い付いたとばかり、真帆は一人ニヤニヤした。
ところがいざ翌日実行しようとしたところ、一年生の女子部員どこか、男子部員まで全員いた。みんな同じ事を考えていたのだ。
湯浅のニックネームは『ミスター・パーフェクト』。容姿も頭脳も弓道の腕前もすべてにおいて三重丸の彼は、女子だけでなく、男子も仲良くなりたいと思っていた。
ダメ押しだったのは、湯浅は真帆以外の部員の専任指導員になってしまった事。彼は男子部員につきっきり。自分も当然練習しなければならないので、話せるのは上級生だけとなった。
(もう、仲良くなるチャンスはないのかなぁ…)
途方に暮れた。味気ない日々が続いた。道の途絶えた絶壁に立ち、戻るか他の道を探すがずーっと考えた。
あの日から約一か月。今、真帆の心は一等星の星のようにキラキラ輝いていた。この世の中で一番自分が幸せな気がした。何でもできそうな気がした。
心がふわふわと宙に浮いていた。的前に立ち矢を射る練習をするため、矢をつがえ構えたが、どこか現実じゃない。的が異世界にあるように見える。