ユアサ先輩とキス・アラモード
 ただ私語ができない代わりに、的中すると大きな声で『よし!』と叫ぶ。信じられないくらい大きい声で叫ぶ。ここでしゃべれないウサをはらしているのかと思うくらい大きい。
 また、湯浅の射った矢が当たった。
「よし!」
力強く叫んだ。
(動きにまるで無駄がない。すべて流れるように進んでいく)
何度射っても矢は三重丸の真ん中、二重目外側に当たる事はない。他の先輩を見れば、当然のように二重丸外側に刺さっている。
(改めて見たけど、湯浅先輩の実力ってすごい。ダントツだ。こんなすごい人に教えてもらうなんて、絶対ツイている。絶対うまくなる。ちょっとくらい辛くったってがんばるぞ!)
 真帆は深々と心に刻んだ。 
 自分に練習の番がやって来ると、さきほど見た湯浅の動きを思い出し射ろうとした。ふと、湯浅がどこに行ったか気になりあたりを見回すと、以外にもすぐ後ろにいて、真剣なまなざしで見ていた。
(よし、いっちょ良いとこ見せちゃおうかな)
ノリノリで矢を射った。
(うへっ!)
ところが矢は三重丸の内側ギリギリに刺さった。もう少しで盛り土に刺さるところだった。
(ま、まだ一射目だもんね。あと十一射もある。これからこれから!)
真帆は鼻息を荒く噴出すと、二本目の矢をつがえ射った。
(よし!)
今度は二重丸の外側ちょっと上に刺さった。
(さっきより真ん中に近づいた。この調子でいけば、ど真ん中に当たるのも時間の問題だ。フフフ、湯浅先輩にホメてもらおーっと!)

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