ユアサ先輩とキス・アラモード
思って間もなく、春風が通り抜けるよう、フワリと唇が離れた。しっかりと抱きしめられていたのが夢のように、湯浅は目の前に自然体で立っていた。
しかし真帆の緊張感は、湯浅の唇が離れると最低になった。ヒドい落差に精神が耐え切れず、前のめりに倒れた。
湯浅はすぐ抱き留めた。舌で自分の唇をなめれば、真帆の耳元に囁いた。
「ごちそうさま」
再び真帆の顔は完熟トマトのように、真っ赤になった。 真帆はいてもたってもいられず、湯浅の腕を振り払い、走って立ち去ろうとした。しかし入り口までいくと鞄を持っていない事を思い出し、戻ってくると目に着いた角をつかみ、弓道場を飛び出した。外靴をはけば、思い出したように振り返って叫んだ。
「お先に失礼しますぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!」
そして力強く走って逃げた。オリンピックに出れそうなほど立派な走りで。
残された湯浅はアゴに手を当てると、ニヤニヤ笑いながら出入り口を見た。
「イジりがいがあるなぁ」
横目で真帆が使っていた弓を見れば近寄って行き、目の前に立つと唇に人差し指を当てた。優しく触れると放し、弓を上から下へ、ゆっくりとなぞった。
「明日は、どんなキスをしようか……エロティック?それともキュート?まあ、一晩あるし、じっくり考えるか」
下までなぜ終えると、フフフと怪しく笑った。
「真帆、骨の髄までメロメロにしてあげるよ」
弓は身悶えているように見えた。
いや、持ち主も身悶えていた。頭の中を駆け巡る煩悩や羞恥心を振り切るよう全力で走っていたのに、何度も何度も何度も思い出し、変になりそうだった。真帆は立ち止まると、頭と体を左右に激しく振って捨てようとした。
「キャァァァァァァァァァァァァツ!」
それでもダメなので、なりふり構わず叫んだ。超常現象にでもあったかのようだ。
遭遇した通勤通学のサラリーマンや学生は、飛び上がりそうな勢いで驚いて真帆を見た。真帆が我に返り、再び全力で走り出せば、知らない人同士で顔を見合わせた。
「今時の学生さんも、大変ですね」
「私もああならないよう、気をつけます」
しかし真帆の緊張感は、湯浅の唇が離れると最低になった。ヒドい落差に精神が耐え切れず、前のめりに倒れた。
湯浅はすぐ抱き留めた。舌で自分の唇をなめれば、真帆の耳元に囁いた。
「ごちそうさま」
再び真帆の顔は完熟トマトのように、真っ赤になった。 真帆はいてもたってもいられず、湯浅の腕を振り払い、走って立ち去ろうとした。しかし入り口までいくと鞄を持っていない事を思い出し、戻ってくると目に着いた角をつかみ、弓道場を飛び出した。外靴をはけば、思い出したように振り返って叫んだ。
「お先に失礼しますぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!」
そして力強く走って逃げた。オリンピックに出れそうなほど立派な走りで。
残された湯浅はアゴに手を当てると、ニヤニヤ笑いながら出入り口を見た。
「イジりがいがあるなぁ」
横目で真帆が使っていた弓を見れば近寄って行き、目の前に立つと唇に人差し指を当てた。優しく触れると放し、弓を上から下へ、ゆっくりとなぞった。
「明日は、どんなキスをしようか……エロティック?それともキュート?まあ、一晩あるし、じっくり考えるか」
下までなぜ終えると、フフフと怪しく笑った。
「真帆、骨の髄までメロメロにしてあげるよ」
弓は身悶えているように見えた。
いや、持ち主も身悶えていた。頭の中を駆け巡る煩悩や羞恥心を振り切るよう全力で走っていたのに、何度も何度も何度も思い出し、変になりそうだった。真帆は立ち止まると、頭と体を左右に激しく振って捨てようとした。
「キャァァァァァァァァァァァァツ!」
それでもダメなので、なりふり構わず叫んだ。超常現象にでもあったかのようだ。
遭遇した通勤通学のサラリーマンや学生は、飛び上がりそうな勢いで驚いて真帆を見た。真帆が我に返り、再び全力で走り出せば、知らない人同士で顔を見合わせた。
「今時の学生さんも、大変ですね」
「私もああならないよう、気をつけます」