ユアサ先輩とキス・アラモード
眠気もすっかり消し飛び、頭の冴えた真帆は、早々に職員室に到達した。眠りの佐藤はすでに机の上に副読本を積んでいて、高層ビルのごとくそびえていた。
(お、重そうだな)
真帆はひるみそうになった。しかしコーヒーをおいしそうに飲んでいた眠りの佐藤は真帆を見つけ、外国人のように手招きした。真帆はしょうがなく行った。
「お、おはようございます」
「おお、忘れずに来たか。エライな」
「私、こう見えて律儀なんです」
「ほほう、授業には不道徳に挑んでいたのにな」
片耳痛い言葉に上手い返し方がわからず黙り込んでいると、ヌフフと勝ち誇ったように眠りの佐藤は笑った。
「まあいい。時間もない事だし、速やかに持って行きなさい」
「はーい」
言われるまま、全冊持った。ズシリと重い。少しよろけた。
「我が子のようだと思えば持てる」
「まだ子供はいませんから、わかりません」
「将来のために、今から練習しとくんだよ」
「結婚しないかもしれません!」
「大好きなアイドルからプロポーズされたら即落ちだろうが。うそついちゃ、いかんぜよぉー」
バシッと音をたてて眠りの佐藤は真帆の背中をたたいた。真帆は軽くキレつつ『だといいんですけど』とボヤいて一歩を踏み出した。
村をのん気に散歩している、じいちゃんばあちゃんのように、ヨタヨタヨタヨタと職員室の中を歩いた。先生たちは危なっかしい足つきに、心配そうな顔で見ている。
「先生達、手伝わないでください。これは中林が昨日、授業中に爆睡していたバツなんです。彼女を更生させるためにも、我慢して見ていてください」
(よけいな事を言うなぁー!)
頭の隅っこで『ちょっとでいいから、誰か助けてくれないかな』と依存的考えを抱いていただけに、図星をさされてムカついた。
(お、重そうだな)
真帆はひるみそうになった。しかしコーヒーをおいしそうに飲んでいた眠りの佐藤は真帆を見つけ、外国人のように手招きした。真帆はしょうがなく行った。
「お、おはようございます」
「おお、忘れずに来たか。エライな」
「私、こう見えて律儀なんです」
「ほほう、授業には不道徳に挑んでいたのにな」
片耳痛い言葉に上手い返し方がわからず黙り込んでいると、ヌフフと勝ち誇ったように眠りの佐藤は笑った。
「まあいい。時間もない事だし、速やかに持って行きなさい」
「はーい」
言われるまま、全冊持った。ズシリと重い。少しよろけた。
「我が子のようだと思えば持てる」
「まだ子供はいませんから、わかりません」
「将来のために、今から練習しとくんだよ」
「結婚しないかもしれません!」
「大好きなアイドルからプロポーズされたら即落ちだろうが。うそついちゃ、いかんぜよぉー」
バシッと音をたてて眠りの佐藤は真帆の背中をたたいた。真帆は軽くキレつつ『だといいんですけど』とボヤいて一歩を踏み出した。
村をのん気に散歩している、じいちゃんばあちゃんのように、ヨタヨタヨタヨタと職員室の中を歩いた。先生たちは危なっかしい足つきに、心配そうな顔で見ている。
「先生達、手伝わないでください。これは中林が昨日、授業中に爆睡していたバツなんです。彼女を更生させるためにも、我慢して見ていてください」
(よけいな事を言うなぁー!)
頭の隅っこで『ちょっとでいいから、誰か助けてくれないかな』と依存的考えを抱いていただけに、図星をさされてムカついた。