溶ける彼女
反対に彼女は海底で砂を食べるナマコながらも、ナマコの仲で唯一輝きながら泳ぎ回ることのできるユメナマコ。
砂を食べる生活の中、魚のように泳ぎ、神秘的な光を放つ美しいユメナマコ。
彼には、彼女と彼の差は歴然に思えた。
「ぴったりだと思わない?」
「あたしナマコ嫌だぁ」
「え、ナマコ綺麗だし美味しいのに」
「美味しいとか関係ないでしょ」
「あ、そうか。でもぴったりだよ」
「そうかな......そう、かも」
彼はうん、と微笑みながら頷くと、手元にある溶けたかき氷に目をやった。
彼女は相変わらず「ナマコかぁ、」と唇を尖らせながら呟いている。