溶ける彼女
「あ、いたいたー」
振り向くと、彼女が土手の上から駆け下りてくるところだった。
彼女は彼の元まで走ってくると、水しぶきもサンダルもスカートの裾も一切気にせずに、そのまま川に入った。
「気持ちいいー! 生き返るよね!」
「うん、一気に体温下がった。涼しい」
あ、ほら、魚ー。
彼女が足元を横切る影を指差して笑う。
ほらそこアメンボ。
彼が彼女の足元を指差すと、きゃ、と悲鳴を上げて少し後ずさった。
「やめてよ、転ぶじゃんか」
「ごめん、こういうの好きなんだ」
「わ、性格悪い、この人!」
彼女があはは、と笑うと、彼は釣られて笑った。