溶ける彼女
何だよ、冷たいじゃん、と悪態をつきながら彼女の座る岩に視線を向ける。
だが彼女はもう岩から降りて、楽しそうに魚と戯れていた。
彼はそんな光景に呆れたように微笑むと、ばしゃ、と水を空に向かって蹴った。
「あ、見て。虹できるよ」
「えっ、何? 虹?」
ほら、ともう一度空に向かって水を蹴る。
すると一瞬、微かな虹がそこに架かった。
「わ、本当だ! あたしもやる!」
彼女はまた岩に乗り、ぱしゃぱしゃと水を空に向かって蹴り始めた。
「続けてやると消えないよー」
何度も何度も、虹を消さないようにと空に向かって水を蹴る。