溶ける彼女
彼女の家は知っていた。
かき氷屋さんから彼の家までの道のりにあるし、遊んだ後は一緒に帰るから場所は分かる。
だが入るのは初めてで、彼は何故か少し緊張していた。
「ママー友達連れてきたー」
彼女が靴を脱ぎながら中に声をかけると、女性の声が聞こえた。
「はーい、入って入ってー」
「あ、お邪魔しまーす」
「クラゲくんね、話聞いてるわー」
「はぁ......」
この家では彼はクラゲくんということになっているらしい。
彼は気付かれないように溜息をついた。
中に入っていくと、声の主であろう女性がキッチンに立っていた。
「いらっしゃい、クラゲくん」
「あ、どうも」