溶ける彼女
彼はなくなったらそれで終わり。
なくなったことさえないというのに。
彼はそんなことを考えながら、彼女に視線を向けた。
だがそこにいたのは某青い狸みたいな猫型ロボットだった。
彼が噴出しそうになるのを堪えていると、彼女が口を開いた。
冷蔵庫に顔を突っ込んだまま。
「君さぁ......いい奴だよね」
そんなことない、と彼は呟いた。
だって嘘をついていたんだから。
「今まで溶けたあたしを見て離れて行かない人なんていなかったよ」
――みんな、あたしを気味悪がった。
顔は冷蔵庫で隠れているものの、彼女がどんな顔をしているのか、彼にはわかった。
泣いているのが、声で分かる。