溶ける彼女

彼女は分かった、と言うと、徐に例のプラスチックケースをテーブルに置いた。
ちょっと見てほしいらしい。

「何虫? 見たことない。蟷螂?」

彼女は嬉しそうに説明を始めた。
昆虫オタクはこういうものなのだろうか、と彼は面白くなって微笑んだ。

ピンク色とクリーム色が混ざったようないちごミルク色の蟷螂に似た虫は、やはり蟷螂だそうだ。
名前は長いし聞いたことがなかったので、彼の脳は理解せず記憶しなかった。

彼女は蟷螂をジュニと呼んだ。

「随分アメリカンだね」
「外国にしかいない蟷螂なの」

どうしても欲しくて、ネットで取り寄せたそうだ。

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