溶ける彼女
――あたし、夏になると溶けるんだ。
彼女の言葉を、彼は聞き返さなかった。
ただ「まぁ、夏って暑いしね」とだけ返してまたかき氷を喉に流し込んだ。
「驚かないね。もしかして、君も?」
「いや、僕は......なくなる、多分」
「なくなる? いきなり?」
「徐々になくなる、多分。蒸発する」
あー、そっちか、と彼女は笑った。
一体どっちなんだ、と彼は思ったが、口に出すことはなかった。
「溶けたらどうするの」
「冷蔵庫か水の中に入れたら戻る」
水の中は分かるが、冷蔵庫に入れたら人は死ぬのではないか――と彼は思った。