溶ける彼女
「僕も......戻りたいな」
「あたしだって戻ってほしいよ」
「戻ったらいいのにな」
「分かんない、戻るかもしれない」
「分かってるよ」
――分かってるよ、もう僕は終わりだって。
そう呟いた彼の声は。微かに震えていた。
「あたし......」
彼女は震える彼の肩を抱いた。
「あたし、君のこと忘れないから」
「忘れたら許さないよ」
「大丈夫、忘れるわけないよ」
――初恋だもん。
彼女はその言葉を飲み込んだ。
言ってしまえば、もっと別れが惜しくなるだろうと思ったから。