溶ける彼女
「......どうして、試してみないの?」
「恐いじゃん。なくなったら終わっちゃう気がするから......まだ、なくなりたくない」
彼女はそっか、と呟くと、少し寂しそうな微笑を浮かべながら溜息をついた。
爽やかな風が吹きはじめ。二人は風を浴びながら口を閉ざし沈黙が広がる。
彼はふと、二人が何かに似ているような気がした。
陸に棲む生物のように丈夫ではなく、もっと儚く美しく、甘美なものたち。
――ああ、そうか。
思わず声に出してしまってから、彼は彼女の視線に気付き、あ、と声を上げた。
「何? どうしたの?」
「いや......、」
「言ってよ。気になるじゃん」