溶ける彼女
僕ら、ナマコとクラゲみたいだなって。
ナマコは溶けるけど、水の中に戻したら元通りに再生するんだよね。クラゲはなくなってしまうと、水の中に戻しても再生はしない。
体の殆どが水分だから、蒸発すると内臓も皮膚も、綺麗になくなる。蒸発してなくなった時点でクラゲは死ぬ。
ほら、僕らと、似てると思わない?
彼は本当にそう思った。
脆く儚くも強い生命力を持つナマコ。
脆く儚く、生命力さえ乏しいクラゲ。
彼女はナマコで、彼はクラゲ。
彼と彼女の間には、決して越えられない生命力という壁がある。
彼は生き返りたくて必死に壁を乗り越えようとするが、強く美しい彼女のいる向こう側へはどうしても行くことができない。
自分は生きることができない。弱くて脆い。
そういう敗北感と虚しさと、彼女への憧れを胸に、広く深く美しい海を漂い続けるのだ。