クランベールに行ってきます
結衣の言葉に、ローザンは眉をひそめると、非難するように冷たく言い放つ。
「本当に、そんな理由だと思ってるんですか?」
「え……違うの?」
結衣が力なく問い返すと、ローザンは大きくため息をついた。
「ぼくが口出しする事じゃないと思うんですけど、こんなにも伝わってないとなると、他人事ながら切ないですね。はっきり言わないのも悪いんでしょうけど」
何をブツブツ言っているのかよくわからず、結衣が黙り込んでいると、ローザンが探るように見つめながら問いかけた。
「ユイさんは、ロイドさんをどう思ってます?」
「ど、どうって、どう?」
唐突に脈絡のない事を訊かれて、結衣は思いきり動揺する。その様子にローザンは納得したようににっこり笑った。
「あ、やっぱりそうなんだ」
「やっぱりって何が?」
ローザンの指摘にさらに動揺が広がり、顔が熱くなってくるのを感じた。
ローザンはにっこり微笑んだまま、意味不明な宿題を出した。
「絶対にそんなはずはないと思い込んで、心にフィルタをかけてませんか? まずは、そのフィルタを取り払って、ロイドさんを見てあげてください。ぼくの言った事の意味がわかると思いますよ。自分が殿下の身代わりである事は棚に上げて考える事をお勧めします。じゃ」
言うだけ言うと、ローザンはコンピュータの方へ歩いて行った。
結衣はローザンの背中を少しの間見つめていたが、窓際の椅子に戻って、ひざの上に絵本を乗せた。
見るともなしに絵本の表紙をぼんやりと眺めながら、ローザンの出した宿題に取り組んでみる。