クランベールに行ってきます
そして一番聞きたかった遺跡の事。ロイドは何度か遺跡の調査に同行し、実際に遺跡の装置を間近で見て、詳しく調べている。これについては他の事より、かなり有益な情報が得られそうだ。
まずは遺跡の装置にカウンタが付いているのかどうか尋ねてみた。そんなものはないとロイドは言う。操作パネルも何もないので、どうやって作動や停止をさせるのかもわからないらしい。
結衣は心中で密かに、ほくそ笑む。自分の仮説が少し信憑性を帯びてきた。
次に過去、活動期の間隔三十年が狂った事があるのか訊いた。暦の関係で、多少ずれた事はあるが、記録に残っている限りで、狂った事は一度もないらしい。
前回の活動期が二十七年前だというので、今回は三年早まった事になる。
それを聞いて、結衣はふと思い出した。
「二十七年前って確か、あなたが遺跡で拾われた時じゃなかったっけ?」
「あぁ」
その時、散々捜したがロイドの両親は見つからなかったと聞いた。
「もしかしてあなた、どこか異世界から来たんじゃないの?!」
結衣が興奮して尋ねると、ロイドは他人事のように平然と言う。
「そうかもしれないって、この間ブラーヌが言ってたな」
「なんで、そんな平然としてるのよ」
結衣が苛々して言うと、ロイドは相変わらず平然と返す。
「元の世界も親も記憶にないんだ。どうだっていい」
「よくないわよ。ご両親はきっと捜してるはずよ」
「二十七年も経ってるんだぞ。きっと、もう死んだと思って忘れてるさ」
「忘れるわけないじゃない、自分の子供の事を! 親なんだもの!」
結衣がロイドのひざを叩いて強く言うと、彼が少しひるんだ。
「そうか?」
そして、少し俯いて自嘲気味に笑う。
「そういうもんなのか。オレは親と暮らした事がないから、親の気持ちはわからない」
「ブラーヌさんは?」
途端にロイドは顔をしかめる。
「あいつは一般的な親とは、かけ離れているからな。寝床と食べ物と学問を与えてくれた事には感謝しているが、お互い共同生活者のようなもんだ。共同生活すら稀だけどな」
「抱きしめられた事ないの?」
「記憶にない」
どうやらブラーヌも相当な変わり者のようだ。なぜロイドを引き取ったのか、直接聞いてみたい。