クランベールに行ってきます
5.名探偵 結衣:検証編
翌日十四時の異世界検索は、またしても失敗に終わった。ロイドはとりあえず検証を後回しにして、ローザンに研究室の留守番を頼むと、結衣と共に東屋に向かった。
誘拐されそうになって以来、ロイドの研究室に入り浸っていた結衣は、建物の外に出るのは本当に久しぶりだった。
庭園の外れの緑のトンネルを抜けると、白い石造りの東屋が見えた。
ここに来たのは随分昔のような気がして、結衣は何だか懐かしさを覚えた。
以前と違っているのは、東屋の周りを囲むようにロープが張られ、文字の書いた立て札が立っている事だ。「危険」とか「立ち入り禁止」とか書いてあるのだろう。
懐かしさと共に記憶が蘇る。
あの時、自分だけドキドキしているのが悔しくて、ロイドに八つ当たりしたのだ。ロイドはそれを結衣に嫌われているからと思い込んで、ふてくされていた。
お互い勘違いしていたのが、今となってはおかしくて、結衣は思わずクスリと笑った。
その様子を訝って、横からロイドが尋ねた。
「何だ?」
「前に、ここから帰る時あなたが、ふてくされてたのを思い出したの」
結衣が笑って答えると、ロイドは不愉快そうに結衣の額を叩いた。
「余計な事を思い出すな」
そう言って顔を背けたロイドの表情が、あの時と同じように少しふてくされているのがおかしくて、結衣は益々笑ってしまう。
「笑うな!」
ロイドはムキになって叫ぶと、再び結衣の額を叩いた。
「だって、おかしいんだもん。ローザンも言ってたけど、あなたって、いつもは自信満々で冷静なのに、時々子供っぽいのよね」
「あいつ、余計な事を……」
小さく舌打ちして、ロイドは顔をしかめる。そして、結衣の腕を掴んで引き寄せた。